Benefits & Risks of Biotechnology Japanese
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バイオテクノロジーのもたらすメリットとリスク
『我々は、単一の遺伝子にわずかな改変を加えるのに留まらず、ゲノム全体を自由に書き換えることができる全く新たな時代に突入した』
ジョージ・チャーチ、ハーバードメディカルスクール 遺伝学教授
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バイオテクノロジーとは何か?
科学者は自然の仕組みを人類のためにどう利用しようとしているのか、そうした行為によって、どのような悪いことが起こりうるだろうか?
バイオテクノロジーの歴史は、人類そのものの歴史と同じほどの長さがあります。あなたや愛するペットが口にする食べ物について考えてみましょう。農業革命を起こし、穀物や家畜、その他の愛玩動物の有用な選抜育種を行ってきた遠い先祖に感謝することでしょう。
エドワード・ジェンナーがワクチンを発明し、アレクサンダー・フレミングが抗生物質を発見したときには、バイオテクノロジーに備わった力が利用されていました。さらには、ビール、ワインやチーズを製造するための発酵技術なしに、現代文明を想像することすらできません!
農業技師であったカール・エレキーが、『バイオテクノロジー』という言葉を1919年に造ったとき、彼はこれを「原材料から生物による作用の力を借りて製品を作り出す一連の作業」と定義づけました。
現在のバイオテクノロジーにおいては、研究者たちは生命細胞、植物、動物が有する能力を人間にとって都合の良い何かに変えるために、DNAやたんぱく質を改変しています。バイオテクノロジストは自然界に存在するDNAのシークエンシング、つまり読み取りを行い、これを試験管の中で 、そして直近では生きた細胞の中で 操作することによってこの様なことを行っています。
実際の所、最近におけるバイオテクノロジーの中で最も驚くべき新たな進歩は、細胞膜内側の微視的な(そしてより小さな)スケールで起きています。細胞の化学的および遺伝子的な構成の解明を目的とする過去数十年の基礎研究を経て、20世紀中頃の生物学者は、続く数十年にわたる研究熱や画期的な発見に至るような研究を立ち上げました。
彼らの研究は、今ではバイオテクノロジストが自由に使える、細胞を研究するための強力なツールをもたらしました。次なる数十年の間に、科学者たちは精密なDNA編集から、基本的な化学物質を原材料としてゲノム全体を合成するといったことまでを含む、より精密な制御を可能にする細胞改変のためのバイオテクノロジーの手法を用いることでしょう。
このような細胞から、爆弾の臭いを検知できる植物や、がんを治癒する魔法のような薬、絶滅したはずのケナガマンモスが復活させられるかもしれません。さらにはバイオテクノロジーが気候変動問題を解決する重要な手段ともなり得るでしょう。
しかし、生命のもつ青写真を書き換えることには著しいリスクを伴います。まず第一に、我々の寿命を延ばすためのテクノロジーが、死をもたらすために使われる可能性があるということです。研究者がスーパー・インフルエンザウィルスを扱う技術は、インフルエンザの理解を深め、インフルエンザに対処する方法として完全に合理的であるとみなされるであろう一方、一般の人たちが、これには問題点があると考えることは明らかでしょう。
ウィルスが漏洩したり、誰かが武器の製造に転用する可能性があるということです。また、蚊の繁殖を抑えるために誰かが考え出した先進的で遺伝学的なツールが予期せぬ影響を生じさせ、環境破壊につながる可能性もあります。もっとも洗練されたバイオテクノロジーは、マーフィーの法則ですら及びもしないものかもしれません。
バイオテクノロジーのリスクは何十年もの間人々を悩ませてきましたが、一方で、低コストDNAシークエンスから、高速遺伝子合成や精密なゲノム編集に至るまで、テクノロジーの加速的な進歩は、有益な応用と、不安度の増したリスクの両方の側面で新たな熟成段階に入りつつあることを示唆しています。
さらには、より多くのアマチュア研究家がラボの外にバイオテクノロジーのツールを持ち出しているという問題もあります。現時点では、バイオテクノロジーの利点は明らかである一方、リスクについては想像の域を出ていません。とはいえ、何か問題が起きてからこれに対処しようとするのではなく、リスクを認識し、事前に対応するのが良いのです。
バイオテクノロジーはどのように私たちの役に立っているのか?
人工衛星の映像は、伐採された森林、大規模なダムと貯水池、何百万キロもの道路というように、人類が地表に大規模な変化をもたらしたことを明らかにしています。もし顕微鏡の世界を人工衛星からの画像のように撮ることができれば、バイオテクノロジーの及ぼす影響は同じく明白でしょう。
私たちが口にする食物の多くが、殺虫剤を使うことなく、より少ない栄養物でも育ち、また急激な気候変動に耐えるよう現代のテクノロジー、もしくは伝統的な選抜育種で改造、操作された植物です。製造業者はプラスチック、化粧品や燃料といった多くの消費財に含まれる石油を基にした材料を、バイオマテリアル(生体材料)に置き換えています。みなさんが着ている綿製の服の多くも同様です。
しかし、おそらくバイオテクノロジーの最大の応用分野は、人間の健康に関するものです。バイオテクノロジーは、妊娠支援から出生前診断、家庭での妊娠テストに至るまで、私たちが生まれる前から生活の中で使われています。予防接種や抗生物質なども幼少期から使われ、これらによって平均寿命が大幅に改善されました。
バイオテクノロジーは、がんや心臓病治療の大型新薬に後れをとっていますが、アルツハイマーや若返りの最新研究に展開されています。バイオテクノロジーを支持する科学者たちは、CRISPR/Cas9という技術が、遺伝病の治療のためのDNA編集を安全に行なうカギになるかもしれないと考えています。そしてある企業は、キメラ豚の体内で人間の臓器を成長させることによって、臓器移植のキャンセル待ちリストを無くすことができると主張しています。
バイオテクノロジーのリスクとは?
人々が興奮する中、研究が急速に進んだことが、バイオテクノロジーの進歩がもたらす結果に対する疑問を投げかけました。バイオテクノロジーは科学の他の分野よりもリスクを抱えているかもしれません。
微生物はとても小さく、検出するさえ難しいほどですが、著しい危険性をはらんでいます。その上、操作された細胞は自ら分裂を始め、秩序なく広まり広範囲な影響を及ぼす可能性があります。
善意で行われた研究が意図せぬ結果をもたらしたり、害を及ぼそうと生物学的な操作が意図的に行なわれるなど、バイオテクノロジーは危険であることが証明される可能性がとても高いことでしょう。ある集団が危険だとか非倫理的だと考えるようなバイオテクノロジーの応用を、別の集団が実行に移してしまうことに対するやっかいな議論も起こり得ます。
1. 意図せぬ結果
1930年代のオーストラリアのさとうきび農家は、ある問題を抱えていました。サイカブトが作物を荒らしていたのです。そこで農家は、自然界に存在するオオキヒキガエルを天敵として輸入すれば、自然の力で害虫駆除ができるので何も問題はないだろうと考えました。ところが、カエルが彼らにとって最悪の悩みの種となったのです。オーストラリア大陸中に広がり、固有の動物種を食べ始めたのです(皮肉にもサイカブトを除いてですが)。
バイオテクノロジーによる現代的な解決策は、両生類を空中から投下するようなやり方よりはずっと洗練されていますが、いま紹介した失敗例は、ある種の警告を与えます。失敗を惨事へと転じさせないために、過去の失敗から学ばなければなりません。
- 度重なるミスによって科学者がエボラ、炭疽菌やインフルエンザに晒されたことから、2014年にアメリカ疾病予防管理センター(CDC)に厳しい調査が入りました。また、2011年にオランダのある教授が、先に述べた空気感染する型の致死的なインフルエンザウィルスを研究室で作り上げ、それを公表しようとしたことに対し、厳しい批判を受けました。
このような研究所は、彼らが想定した脅威を理解し、それに対する治療を発見するためにウィルスや毒物を研究していますが、致死的な物質が解き放たれたり、人為的なミスによって間違って取り扱われれば、公衆の健康に対する緊急事態を引き起こしかねません。
- 蚊は 有害で、時には死に至る病原体であるジカ熱、マラリアやデング熱といった伝染病を媒介します。環境システムにおいて、蚊には有益な役目が何もないように思えます。しかし、一般市民や立法者は病原菌を媒介する蚊の種を遺伝子改変し、絶滅させることについて懸念を表明しています。
- 遺伝子ドライブという技術では、有性生殖によって個体群へ迅速に特定の遺伝子が拡散するように設計されています。例えば、蚊を制御するために、科学者は不妊の子孫だけを残すように改変されたオスを野生に解き放つことが可能です。遺伝子ドライブを研究している科学者たちはリスク評価を実施し、試験を可能な限り安全に行うような安全機構を整えました。しかし、これまでに人類が造り出した遺伝子ドライブは自然界で試されたことがなく、蚊を絶滅させることが環境にもたらし得る影響を確度をもって知る手段がありません。さらには、遺伝子ドライブが施され、野生に解き放たれた蚊が突然変異を起こし、研究者たちが考えても見なかった遺伝子が広まる可能性がわずかながらもあります。遺伝子ドライブにより凶暴化したものを元に戻す戦略を備えていたとしても、一旦、研究室の外に出て拡散してしまえば、科学者がこれを制御することは困難かもしれません。
- HIVウィルスに対する免疫をもっているとみられる人々のDNAから、HIV解明の糸口を見いだそうと科学者たちが精査していた時、HIVウィルスに抵抗力のある人の体内では、ウィルスが血球の表面に結合する際に利用するたんぱく質に突然変異が起きていることを発見しました。ウィルスに感染したこれらの患者は、たんぱく質が存在しないために健康を保っているように見えることから、感染した患者、もしくは感染の危機に曝されている患者の細胞からこのたんぱく質を作り出す遺伝子を除去すれば、HIVやエイズに対する恒久的な治療法になると考えました。
「DNAのはさみ」であるCRISPR/Cas9という新しい手法が発明されたことにより、HIV、がんやその他の多くの遺伝子疾患に対する単純な外科的治療の実現が期待されます。しかし、人間の細胞に対する試験では、DNAが編集されてはならないゲノムにも突然変異が起こるという、問題のある結果が得られました。下手な散髪は困りものですが、CRISPR/Cas9による誤った切断は、健康をもたらすどころか、健康状態を悪化させ深刻な事態を招きかねません。
また、このような遺伝子改変が成長を終えた成人ではなく胎児の細胞に施されると、生じた突然変異が恒久的に遺伝子プールに入り込む可能性があります。つまり、将来の全ての世代に改変遺伝子が伝わってしまうということです。
今のところ、有名な科学者や一流の専門誌は、リスク、倫理および社会におよぼす影響をより良く理解するまで、生存可能た胎児(胎芽)への遺伝子編集を行なうことについて、モラトリアム(一時停止)の実施を要請しています。
2. 生物学の兵器化
全世界の人々は、エボラウィルスやジカウィルスによる病気の大発生を目の当たりにしましたが、これらは自然界に発生したものでした、将来における病気の大発生は、バイオテクノロジーの悪用によって意図的に引き起こされるかもしれません。一国のリーダであろうが、テロリスト集団であろうが、そのような悪事を働く者が開発する毒物や感染症を引き起こす生物兵器を察知することは難しく、投下を防ぐことはさらに困難なことでしょう。
銃弾や爆弾と異なり、死を招く細胞が一旦ばら撒かれると、長期間にわたって拡散を続けるかもしれません。アメリカ政府はこの危険性を非常に深刻に受け止めており、、生物兵器の環境に対する脅威を軽視してはなりません。
先進国、それに貧困国でさえも生物兵器を製造するための資源やノウハウを有しており、北朝鮮は「炭そ菌、ボツリヌス菌、出血熱、ペスト、天然痘、腸チフス、それに黄熱病」を含む兵器を組み立て、攻撃する準備が整えられていると噂されています。
テロリストや他の集団も生物兵器を入手しようとしていてもおかしくありません。事実、化学兵器や生物兵器を使用した多くの事例が記録されており、9/11同時多発テロの直後には炭そ菌による脅迫事件が発生し、郵便物として届けられた細菌の入った容器により5人が死亡しました。新しい遺伝子編集技術は、特定の民族や特定の個人を標的とした生物兵器の使用が単なる想定から、いつの日か現実となる可能性が高まってきています。
さほど専門家を必要としない伝統的な兵器を用いる攻撃とは異なるとはいえ、生物兵器の危険は無視できるものではないでしょう。大量の高価な物質と豊富な科学的知識なしに生物兵器を製造することは不可能であるように思えますが、近年の進歩により、バイオテクノロジーによって研究施設の外で生物兵器を作ることが簡単になっているかもしれません。
一連のDNAを化学的に作る製造コストは急激に低下しており、致死的なたんぱく質や細胞を家庭内で「プリント」することができる日が来るかもしれません。また、科学論文の公開性を高めることは研究のスピードを高めるのには重要ですが、これは同時に、誰もが致死的な神経毒の化学的な詳細について、自由にGoogleで検索できることを意味しています。
希望的に述べると、科学の進歩によって、発生したバイオテクノロジーの脅威に対する解決策を研究者たちが直ちに提供できるかもしれません。DNAの組み換えとバイオテクノロジーのツールは、疫病の発生に対し、それが自然発生的なものであれ人工的なものであれ、感染を防ぐ感新しいワクチンを迅速に作ることを可能にしています。
例えば、ジカウィルスが人々の健康への緊急事態であるとWHOが宣言してから5か月も経たないうちに、研究者たちはDNAワクチンの臨床試験を行なうことを許可されました。
バイオテクノロジーの倫理的問題
バイオテクノロジーは、常に我々の生命を根本的に変えるほど脅威的だとか、危険であるわけではありません。人類は何千年にもわたって植物や動物の遺伝子を改変してきましたが — 最初は選抜育種を通して、もっと最近では分子レベルでの操作やキメラなどを通して — 実は我々が自らのゲノムに手を加え始めたのはまだ始まったばかりの段階なのです。(そしてこれは大論争がなされている真っ最中です。)
CRISPR/Cas9 やDNA合成といった最先端の技術は、重要な倫理的問題を浮かび上がらせており、それらの課題と向き合う緊急性が増しています。その一つとして、人間の遺伝子を改変することは「神を冒涜している」ことに当たるのか、もしそうならば、その行為自体を行わない方がよいのかといった問いかけがあります。
例えば、人を対象とした遺伝子療法が病気の治療法として許容できるのであれば、どこで線を引けばよいのかといった課題があります。病気の発現と関連している遺伝子変異の中には、早期の死がほぼ確実視できるものもあれば、他のものだとアルツハイマーといった病気を発症させるリスクを高めるものの、必ずしもその変異が病気を引き起こすとは限らないといったものもあります。他の多くのものはその中間の性質を有しています。
特に、遺伝子治療そのものが遺伝子的ダメージを与えるリスクがあるということを考えると、どのような条件下で、どの遺伝子操作を実行するべきかを決める確固たる規定が必要ですが、それはどのように策定すればよいのでしょうか。学者と政策立案者は幾年にもわたってこのような問題と向き合ってきており、「国連のヒトゲノムと人権に関する世界宣言」といった文書にはその指針たるものが盛り込まれています。
また、バイオテクノロジーがもたらす社会の格差に対する影響はどうでしょうか。初期の段階では遺伝子治療は疑いもなく高額となるでしょう—例えば、ノバルティス社は、死が確実とされていた患者達に対する臨床試験で命を救ったという、最近承認された癌治療薬による一回の治療に対し47万5,000 ドルを請求する計画を立てています。
現在の収入格差の実態に、バイオテクノロジーの手法やデザイナーベビーといったものが組み合わさることで、将来、遺伝子操作による改良に金銭的に手が届かない人々を恒久的に下級階級に封じ込めることになるのではないでしょうか。
バイオテクノロジーの進歩に伴い、生命を改変させることに対する問題や、生命を新たに無から創造することに関する論議が活発化しています。例を挙げると、最近発表された「 GP-Write」 という新規構想で は、今後10年間のうちに人の全ゲノムを基本的な構成物となる化学物質から合成することを目標としています。このプロジェクトの主催者側は、ケナガマンモスを蘇らせたり、人の臓器をブタの中で育てるといった様々な応用の仕方を考えています。
しかし批判家が述べているように、テクノロジーは生物学的な親を持たない子供を発生させたり、アインシュタインの細胞レベルでのレプリカなど、別の人間の遺伝子を複製させたりすることを可能にする潜在的な力があります。GP-Wright プロジェクトに関して、生命倫理の専門家二人がこう書いています:「人の遺伝子をゼロから作製するなど甚だしい倫理的逸脱だ」。
これに対し、 GP-Writeの主催者側は、倫理ついての活発な議論を歓迎するとしており、合成した細胞を生身の人間に変えたりするつもりはないと主張しています。しかしながらこれは、急速に発展しているテクノロジーが、我々のまだ予期できない方法で応用されかねないという懸念を完全に払拭するわけでは決してありません。
バイオテクノロジーのツールとは?
1. DNA シークエンシング(DNA配列)
現代のバイオテクノロジーは、DNAシークエンシング抜きに想像することはほとんど不可能です。事実上、生物学に関する全て情報はDNAに含まれているため、細胞、植物、動物の特性を変更しようとしているバイオテクノロジストたちは、同じく分子生物学の用語で語らなければなりません。
DNAは基本構成物質である4つの塩基からできており、DNAシークエンシングとは鎖の中のこれらの塩基の配列を決定するプロセスのことです。2003年に人間の完全なゲノム(全遺伝情報)が発表されてから、DNAシークエンシングのコストは大幅に下がり、簡単に広く使われる研究ツールになりました。
利益: ソーニャ・ヴァラーブ(Sonia Vallabh)は、彼女の母親が稀で致命的な遺伝病により亡くなった時にロースクールを卒業しました。DNAシークエンシングが示したところによると、ソーニャもこの致命的な突然変異遺伝子を引き継いでいました。彼女は運命に従うより、夫エリックとともに病気と闘う決意をし、いまではハーバード大学院生として、病気の治療法探しを夫婦で競い合っています。DNAシークエンシングのおかげで、ソーニャの卵子がこの突然変異遺伝子を持っていないかを医者たちが検査できたことで、彼女は妊娠することもできました。
ほとんどの人々にとって遺伝子に描かれた青写真には、命取りになるような不可解なことは含まれていません。その一方、私たちの健康は、DNAシークエンシングが可能にした医学的新発見によって、ますます支えられるようになっています。
例えば研究者たちは、DNAシークエンシングを使い、2014年に流行したエボラ出血熱をリアルタイムで追跡できました。そして製薬会社は、特定のDNA突然変異を持つ人々をターゲットにした新しい抗がん薬を設計しています。個人向けの薬といったようなすべての新分野は、DNAシークエンシング技術の恩恵を受けています。
リスク:単にDNA情報を読み取ることは有害ではありませんが、情報の読み取りはすべての現代のバイオテクノロジーにとって基礎となっています。格言にもあるとおり、『知識は力なり』です。DNA情報の誤用や悪用は、恐ろしい結果を引き起こすこともあり得ます。DNAシークエンシングだけでは生物兵器を作ることはできませんが、伝染性や致死性の細胞やウィルスの遺伝子を分析する技術を持たずに、生物兵器を用いた戦闘行為を仕掛けるとは考えられません。
個人のDNA情報は、祖先や家族、健康状態の情報を含むため伝統的にプライベートな情報と考えられてきたにもかかわらず、企業や政府が収集する情報には個人のDNAシグネチャー(署名)がますます含まれるようになっています。
映画GATTACAを見た人ならばご存知のディストピア的な未来の見方ですが、個人的な医療記録をもとに人々を追跡したり、差別化したりすることにこうしたデータベースが使われるかもしれないと警鐘を鳴らしている人たちもいます。
患者自らの遺伝情報を提供することでさえ、FDA(アメリカ食品医薬品局)と消費者遺伝テストサービス会社23andMeとの間の論争で明らかにされたように、テストが適切な状況下でなされなかったケースにおいては調査の対象となりました。最後の論点としてDNAテストは、倫理的な議論、例えば突然変異が見つかった胎児を流産させるべきどうかといった難しい問題への扉を開きます。
2. DNAの組み換え
現代的な意味でのバイオテクノロジーは、科学者たちが試験管の中でDNAを操作、別の言い方をすれば「組み換え」を行った際に誕生しました。そしてこんにち、およそすべての社会の様相は、『リボソームDNA(rDNA)』と呼ばれるものの影響を受けています。
DNAの組み換えツールは、研究者たちが健康や産業に重要と考えられるたんぱく質を選び出し、そして本来の環境からそれを取り出すことを可能にしました。取り出されたそのたんぱく質は、操作が簡単な大腸菌のような種の中で研究することができます。これは研究者たちがそれらを大量に再生し、改良された性質を持つように操作し、さらに/もしくはそれを新たな種に移植することを可能にしています。現代のバイオ医療研究、多くの人気の医薬品、あなた方が着ているほとんどの服、そしてあなた方が食べている多くの食物がrDNAバイオテクノロジーに依存しています。
利益: 簡単に言いますと、私たちの世界は、rDNAによって作り変えられています。現代医学の進歩は、細胞やたんぱく質をrDNAで研究する能力と、研究者が試験管のなかでDNAをコピー&ペーストするPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)のようなツールなしでは考えられません。
ワクチンと医薬品数の増加は、rDNAの賜物です。例えばこんにち、糖尿病の治療に使われているほとんどすべてのインスリンは、DNA組み換えで生産されています。またチーズの愛好者は、西側で生産されている大部分のハードチーズに、rDNAによる材料が使われていることに興味を持たれるかもしれません。
多くの重要な作物は、高い収穫性、環境へのストレス耐性、殺虫剤がなくても育つよう遺伝的に改変されています。先例のない環境変動の脅威に直面し、多くの研究者たちはrDNAや遺伝子組み換え作物が、急激な環境変化に適応しようとする人間の試みにとって重要になるだろうと考えています。
リスク:rDNAの発案者たち自らが、 一般の人々と同僚の研究者らにこの技術の危険性を警告しました。例えば、rDNAによって薬物耐性のあるバクテリアが研究所から逃げ出し、伝染性の超強力なスーパーバグとして、一般の人々を脅かす事態になることを発案者たちは恐れました。シャーレの中で、遺伝子を細胞に導入するために役立つ組み換えウィルスが、転じて人間の研究者に感染するかもしれません。
いくつかの当初の恐れは、遺伝子改変は当初に考えられていたよりもかなり扱いにくいということを研究者らが理解したために沈静化しました。そして組み換えされたウィルスや致命的な毒物の取り扱いといった現実の脅威が特定されると、安全基準や規制措置が 定められました。
それでもなお、悪い科学者やバイオテロリストがrDNAを使った生物兵器を製造するという懸念があります。例えば、2006年に科学者らがポリオウィルスを一から作り出すのに3年かかりましたが、現在では同じことがたった数週間でできることでしょう。
最近のインフルエンザの流行では20万人以上が亡くなりました。そして悪意をもって改変したウィルスを解き放つことは、ワクチンの備蓄といった予防措置がとられていなければ、もっと多くの死者を生み出すことになるでしょう。
3. DNA 合成
DNAの合成は、最終生成物への総合的なコントロールを研究者に提供するという利点があります。DNAの不可解なことの多くはまだ解決されていないため、科学者の中には、基礎的な構成物(ヌクレオチド基)からゲノムを作り出すことだけが、真にゲノムを理解することにつながると考えています。
DNAをゼロから組み立てることは、従来とてもコストが高く、実用上は非常に非効率です。しかし2010年に研究者たちはこれを実行に移し、バクテリアのゲノムを完全に合成し、生きた細胞に注入しました。以来、科学者たちはより大きなゲノムを作りだしてきました。
そして最近、最終目的がおそらく「化学的に完全な人間のゲノムを組み立てる」との意図をもったGP-Write(ゲノムの書き出し)プロジェクトを研究者らは始動させました。10年以内のタイムラインでこの目的を達成するには、新しい技術と製造能力の大規模な拡大を必要とします。しかしこのプロジェクトが成功すれば、合成DNAが将来のバイオテクノロジーに強い影響を及ぼす予兆となるかもしれません。
利益:コストの急落と技術的進歩によって、全ゲノム合成というゴールが、より一層近づいたように見えます。科学者たちは、こうした進歩と識見によって、最終的に医薬品や爆弾探知植物などに役立つ特注の細胞を容易に作れるようになることを望んでいます。
DNA合成の空想的な応用には、すべてのウィルスに対し免疫がある人間の細胞やDNAをベースとしたデータ記憶装置を含みます。ハーバード大学のジョージ・チャーチ教授は、DNA合成の技術を使って絶滅したリョコウバト、ケナガマンモス、さらにはネアンデルタール人など『絶滅種の復活』を提案しました。
ある企業は、ブタの細胞をDNA合成を使って編集し、その臓器を人間へ移植することを計画しています。また、一つの動画ファイルを一個の細胞の中のゲノムに科学者らが保存してみせたように、DNAはデータ保存の効率的なオプションともなっています。
リスク:DNA合成は、かなりの論争と倫理的懸念を引き起こしました。例えば、GP-Writeプロジェクトが発表されたとき、ゲノムの合成が、神を演じることになぞらえることを想起させるという問題を起こしかねない可能性があると、組織側を批判する人たちもいました。例えば、アインシュタインのゲノムを合成し、それを細胞に移植することは倫理的でしょうか?
それを実施する技術はまだ存在しておらず、またGP-Writeのリーダーたちは、生きた細胞の中で人間のゲノムを作ることにしり込みしていますが、中にはその技術が到来する前に倫理的な議論をしっかりすべきだと要求している人たちもいます。
また、あるウィルス学者が、インターネットで購入したDNAを用いて馬痘ウィルス(天然痘を引き起こすことに関連したウィルスと関連性があるウィルス)を作り出したことで示されるように、安価なDNA合成が、生物兵器やそのほかのやっかいなものを作る能力が一般大衆に広まることも懸念されています。(注記:馬痘ウィルスを作るには、特殊な機器と深い技術的知識といった要素が必要です。)
4. ゲノム編集
多くの病気の元は、私たちのDNAの中にあります。そして最近まで、医師たちはその病気の根本原因の解明にわずかな手段や道具しか持ち合わせていませんでした。この状況は、CRISPR/Cas9(用語メモ:CRISPRはバクテリアの免疫システムで、Cas9はそのシステムの一つのたんぱく質成分)と呼ばれるDNA編集システムが最近発見されたことにより変わりました。
これは細胞のなかでまるでDNAのはさみのように動作し、科学者らがDNAのシーケンス(列)を挿入できるようにゲノムの穴の位置を開きます。DNAの切除能力は先例がないわけではありませんでしたが、Cas9はその効果と使いやすさを向上させました。CRISPR/Cas9はバイオテックの新参だったにもかかわらず、大部分の科学者のコミュニティにおいてCRISPRフィーバーとなり、バイオテック企業は、ゲノム編集ツールを次の大型ヒット製薬にするために競っています。
利益:ゲノム編集は、一つの遺伝欠陥によって引き起こされる、嚢胞性繊維症のような現在では治りにくい遺伝病を解決するカギとなるかもしれません。Cas9を患者の細胞にどうにかして挿入することができたら、そのような病気を引き起こす突然変異を完治させることができるでしょう。
がんやHIV/エイズのようなウィルスによって引き起こされる多くの突然変異による病気でさえ、ゲノム編集で治療できるかもしれません。つい最近、他の治療で疲弊していた患者に対し施して、劇的な反応が観察された、がんのための遺伝子セラピーをFDA諮問委員会が推奨しました。
ゲノムの編集ツールは、病原の研究室モデル、記憶を保存する細胞、そしてジカ熱やエボラ熱などの伝染性ウィルスを検知するツールなどにも使われています。また先に述べた通りCas9を使う遺伝子ドライブが効果的に展開されると、毎年およそ50万人を死に追いやるマラリアのような病気を私たちは根絶することができるでしょう。
リスク:Cas9は、興奮と同じ程度に論争も引き起こしました。なぜならゲノム編集は、安全性の問題と倫理的リスクの両方を抱えているからです。細胞の中のDNAを切り取り、修復することは、リスクがないわけではありません。そしてプロセス中の失敗が、病気を治すのではなく、悪化させることもあり得ます。
精子や卵子といった生殖細胞のなかでのゲノム編集は、子孫に継承される遺伝的変化にもつながる可能性があり、それは危険な突然変異が後の世代に引き継がれることを意味します。
今のところ、個人の遺伝子と、その人の知性や外見となどの間にある単純な関係は見出されていませんが、もし両親が自分の子供の特性を選ぶことが許されるとしたら、このようなデザイナーベイビーの登場を恐れ、非倫理的なゲノム編集の使用を警告する人々もいます。
特定の病気の拡散を最小限に抑える可能性があるにもかかわらず、遺伝子ドライブは、ある種を絶滅させ、または改変する意図を持っているがゆえに、大きな害を引き起こす可能性があります。遺伝子ドライブの成功が、意図しない環境への影響、悪意を持った使用、予期しない方向への突然変異につながるかもしれません。
最後に、そのような技術は現在まだ存在していませんが、悪党のエージェントが、特定の遺伝的形質を持った個人や集団だけを狙った生物兵器を開発する可能性がないわけではないのです。
推奨参考文献
動画
- Prof. Marc Lipsitch: Risks and Benefits of Gain-of-Function Experiments in Potentially Pandemic Pathogens
- Cathal Garvey: Bringing Biotechnology into the Home (TEDx Talk): In this TEDx talk, Cathal Garvey reviews the benefits of biotechnology and introduces consumer biotechnologies in development; such as bioprinters, customized pets, downloadable DNA, and biochips.
- Nina Tandon: Caring for Engineered Tissue (TED Talk): In this TED talk Nina Tandon talks about simple but powerful methods of caring for artificially grown cells by copying their natural environment.
- Gregory Stock: To Upgrade is Human (TED Talk): Biotech ethicist Gregory Stock talks about new, more meaningful (and controversial) technologies, like customizable babies, whose adoption might drive human evolution.
- Richard Resnick: Welcome to the Genomic Revolution (TEDx Talk): In this accessible talk from TEDxBoston, Richard Resnick shows how cheap and fast genome sequencing is about to turn health care (and insurance, and politics) upside down.
- Ellen Jorgensen: Biohacking – You Can Do It Too (TED Talk): In this TED talk, Ellen Jorgensen introduces us to the biohacking community and reviews common misconceptions about the dangers of biohacking.
研究論文
- Potential Biohazards of Recombinant DNA Molecules
- Climate Change and its Effect in Agriculture
- Current CRISPR gene drive systems are likely to be highly invasive in wild populations
- Bioweapons, Biodiversity, and Ecocide: Potential Effects of Biological Weapons on Biological Diversity
- An analysis of gene drive risks and safeguards
- Gene Drive FAQ
- Bruce Schneier – Resources on Existential Risk, p. 103
書籍
- Biotechnology for Beginners: An overview of biotechnology for beginners and lay readers. Includes a wide array of biotech sciences such as: genetics, immunology, biochemistry, agronomy, food science, and animal science.
- Biotechnology and the Human Good
- Fighting for the Future of Food
- Introduction to Biotechnology
- Our Posthuman Future: Consequences of the Biotechnology Revolution
情報文書
- What is CRISPR-Cas9?
- FAQs: Gene drives
- What is PCR (polymerase chain reaction)?
- DNA Databases and Human Rights
- What Exactly Is Synthetic Biology?
- GP-write Announces ‘Ultra-safe Cells’ as Featured Community Project
- Summary of historical attacks using chemical or biological weapons
- National Biodefense Analysis and Countermeasures Center
- Universal Declaration on the Human Genome and Human Rights
論文
- Designer babies: an ethical horror waiting to happen?
- Scientists program cells to remember and respond to series of stimuli
- Should We Synthesize a Human Genome?
- As D.I.Y. Gene Editing Gains Popularity, ‘Someone Is Going to Get Hurt’
- DNA could store all of the world’s data in one room
- Researchers Say They Created a ‘Synthetic Cell’
- Asilomar 1975: DNA modification secured
- Scientists Seek Moratorium on Edits to Human Genome That Could Be Inherited
- What Is Personalized Medicine?
- You’re Only Human, But Your Kids Could Be So Much More
- Using CRISPR, scientists efficiently edit genome of viable human embryos
- First human-pig ‘chimera’ created in milestone study
- Cheap DNA Sequencing Is Here. Writing DNA Is Next
組織・団体
- Cambridge Working Group: Works to address the risks of Potential Pandemic Pathogen research through promoting public understanding, risk assessment and regulation of such research.
- etc Group: Works to address the socioeconomic and ecological issues surrounding new technologies (especially agriculture) that could have an impact on the world’s poorest and most vulnerable people.
- American Biological Safety Association (ABSA): Promotes biosafety as a scientific discipline through forums and peer-reviewed journals for biosafety professionals throughout the world.
- Biomedical Advanced Research and Development Authority (BARDA): Develops and procures needed medical countermeasures (MCMs), including vaccines, therapeutics, diagnostics, and non-pharmaceutical countermeasures, against a broad array of public health emergencies in the US.
- Biotechnology Industry Organization (BIO): A trade association representing biotechnology companies, academic institutions, state biotechnology centers, and related organizations around the world. Researches and developes innovative healthcare, agriculturual, industrial, and environmental biotechnology products.
- Center for Advanced Biotechnology and Medicine: Conducts biomedical and biotech research and development to improve human health.
- Center for Biodefense and Emerging Infectious Diseases (CBEID): Addresses and researches important issues in the protection of the US from biological threats, including bioterrorism, biological warfare, and tropical infectious diseases.
- Center for Infectious Disease Research and Policy (CIDRAP): Works to prevent illness and death from infectious disease threats through research by implementing real world practical applications, policies, and solutions.
- Center for International Security and Cooperation: Stanford University’s hub for researchers working together to tackle some of the world’s most pressing security and international cooperation issues; and to influence the policymaking agenda in the United States and abroad to help build a safer world.
- Center for Policy on Emerging Technologies (C-PET): A wide network of knowledgeable professionals who identify, clarify, and prioritize the big questions raised in a future perspective to cultivate a context within which solutions can be developed.
- Center for Strategic and International Studies (CSIS): A bipartisan organization that conducts research and analysis, and develops policy initiatives with a future outlook, to help decision-makers chart a course toward a better world.
- Centers for Disease Control and Prevention (CDC): The United States government’s center for research, analysis, and detection of new and emerging global health threats. Promotes healthy and safe behaviors, communities, and environments.
- Centre for Cellular and Molecular Platforms (C-CAMP): A research and development center in India which enables bioscience research and entrepreneurship by providing research, development, training, and service in biotechnology platforms.
- Centre for the Study of Existential Risk: A multidisciplinary research center dedicated to the study and mitigation of risks that could lead to human extinction.
- Chemical Biological Incident Response Force (CBIRF): Responds to chemical, biological, radiological, nuclear, or high yield explosive events in order to assist local, state, or federal agencies in consequence management.
- Chinese Center for Disease Control and Prevention (China CDC): A nonprofit institution that works in the fields of disease control and prevention, and public health management.
- Defence Advanced Research Projects Agency (DARPA) – Biological Technologies Office: Researches and designs breakthrough technologies for nation security.
- Defence Threat Reduction Agency (DTRA): The U.S. Department of Defense’s official Combat Support Agency for countering weapons of mass destruction.
- EcoHealth Alliance: An international organization of scientists dedicated to the conservation of biodiversity that researches the relationships between wildlife, ecosystems, and human health.
- Emerging Pandemic Threats (EPT) Program: Monitors and increases local capacities of geographic hot spots to identify the emergence of new infectious diseases in high-risk wildlife that could pose a major threat to human health.
- Federation of American Scientists (FAS): Provides a scientific analysis of and solutions to protect against catastrophic threats to national and international security.
- Foresight Institute: A think tank and public interest organization focused on transformative future technologies. Discovers and promotes the technological benefits, and helps avoid the dangers of nanotechnology, AI, biotech, and other similar life-changing developments.
- Global Catastrophic Risk Institute (GCRI): A think tank leading research, education, and professional networking on global catastrophic risk.
- Intelligence: Collects and conveys essential information the President and the members of policymaking, law enforcement, and military communities require to execute their appointed duties.
- International Federation of Biosafety Associatons (IFBA): Supports and promotes biosafety on a national and international level through collaboration among national and regional biosafety organizations worldwide.
- International Geosphere-Biosphere Programme (IGBP): Studies the global-scale and regional-scale interactions between Earth’s biological, chemical, and physical processes and their interactions with human systems.
- Lawrence Livermore National Laboratory (LLNL): Applies multidisciplinary science and technology to anticipate, innovate, and deliver responsive solutions to complex global security needs.
- Lifeboat Foundation: An organization dedicated to encouraging scientific advancements while helping humanity survive existential risks and possible misuse of increasingly powerful technologies.
- Middle East Consortium on Infectious Disease Surveillance (MECIDS): Advances the capabilities for early infectious disease and food-borne illness prevention, detection, control, and response between its member countries of Israel, Jordan, and Palestine.
- National Institute of Allergy and Infectious Diseases (NIH): Conducts and supports basic and applied research to better understand, treat, and prevent infectious, immunologic, and allergic diseases.
- New England Complex Systems Institute (NECSI): An independent academic research and educational institution that develops complex systems and its applications to study how interactions within a system lead to its behavioral patterns, and how the system interacts with its environment.
- Nuclear Threat Initiative (NTI): A nonpartisan organization that focuses on strengthening global security by reducing the risk of using and preventing the spread of nuclear, biological, and chemical weapons.
- Resilience Alliance: A research organization comprised of scientists and practitioners from many disciplines who collaborate to explore the dynamics of social-ecological systems.
- Skoll Global Threats Fund: Seeks solutions, strengthens alliances, and spurs actions needed to confront the global threats imperiling humanity.
- Society for Risk Analysis (SRA): A multidisciplinary, interdisciplinary, scholarly, international society that provides an open forum for all those who are interested in risk analysis.
- The Biosecurity Engagement Program (BEP): Engages with Life Scientists to combat biological threats worldwide by providing assistance to improve biosecurity, biosafety, pathogen surveillance, and infectious disease surveillance and response.
- The Center for Bioethics and Human Dignity (CBHD)
- The Club of Rome: An informal association of long-term thinkers interested in and concerned with the future of humanity and the planet.
- The Genome Analysis Centre (TGAC): A research institute focused on the application of genomics and bioinformatics to advance plant, animal, and microbial research to promote a sustainable bioeconomy.
- The Institute for Ethics and Emerging Technologies (IEET): A think tank which promotes ideas about how technological progress can increase freedom, happiness, and human flourishing in democratic societies.
- The Program on Science and Global Security (SGS): Carries out research, policy analysis, education, and training in nuclear arms control and nonproliferation, and provides research and administrative support to the International Panel on Fissile Materials.
- U.S. Department of Defense (DOD): Provides military forces needed to deter war and to protect the security of the United States.
- U.S. Department of Homeland Security (DHS) – National Biodefense Analysis and Countermeasures Center (NBACC): A national resource used to understand the scientific basis of the risks posed by biological threats and to attribute their use in bioterrorism or biocrime events.
- UPMC Center for Health Security: Protects people’s health from the consequences of epidemics and disasters, and ensures that communities are resilient to major challenges.
- Wilson Center: A non-partisan policy forum and a leading institution for tackling global issues through independent research and open dialogue to inform actionable ideas for Congress, the Administration, and the broader policy community.
- X-events: A research institute that works with the theory of surpize, studies extreme events, experiments different anticipation methods, and develops tools for research and decision making.
- Prevent Project: PREVENT works to reduce the risks that zoonoses—diseases that move between animals and humans—can pose to public health.
上記の組織・団体はバイオテクノロジーの諸問題について取り組んでいますが、その他のトピックについても取り扱っています。このリストは完成しておりません。追加分や修正のご提案がございましたら、ご連絡ください。
本ページの執筆と研究リサーチを担当した Jeff Bessenに謝意を述べます。
upmc
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The Future of Life Institute (FLI) is a global non-profit with a team of 20+ full-time staff operating across the US and Europe. FLI has been working to steer the development of transformative technologies towards benefitting life and away from extreme large-scale risks since its founding in 2014. Find out more about our mission or explore our work.